前半、4章まではゲドは出てきません。
アルハ=喰らわれし者という意味の呼び名を与えられた少女の生活と心のありようが切々と描かれていきます。
アルハの本名はテナー。けれどその名は取り上げられ、名前のないものとして、名前のない者たちに使える大巫女としての生活。
彼女の生活は、孤独と闇に満ちています。
そんな中、アルハの世界であるアチュアンの墓所にゲドがやってきます。
ゲドは、1巻である老女から手に入れた腕環の半分を探しに来たのです。
エレス・アクベの腕環とよばれるこの腕環は、世界に平和をもたらすとされている腕環なのです。
ゲドは墓所の中でアルハと心の交流をしていきます。
その中で、だんだんとアルハの心が変化していきます。
1巻では、アースシーの世界を縦横に駆け巡ったゲドですが、今回はずっとアチュアンの中での話。
けれど、その分、心の中の光と闇が描かれていたと思います。
印象的なのは、やはり8章の冒頭で、アルハが自分の名前を取り戻したことを感じるシーン。
わたしはテナーなんだ!
これが、彼女の中に光が戻った瞬間なのでしょうね。彼女の喜びがとても伝わってくるシーンだったです。
前回は影がテーマでした。今回は闇。
どちらも暗いものに属しながら微妙に違うこの2つ。
人の心の中にある暗い部分も余すことなく表現し、その中で光というものを考えさせるような作品だと思いました。